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poison sea


題「poison sea」




ただ、黙っていれば良かったと。


そうすることも、できたよねって。




だれが、人間は進化する生き物だと定義づけてしまったんだろう?
前にすすまなければいけない気がする、そうさせる切迫感。


全身をめぐる血液は、海の成分と近いらしいと聞いたことがある。
なら、こう切迫させる気持ちになるDNAは、毒にも近いのではないだろうか。
この全身を形成している細胞すべてに、張り巡らされる前進への信号命令。
なんて恐ろしいことだろう。


**************


「心が、折れた」


マナちゃんが、私の前で何回もそう口にする。
彼女は、昨日ちょっと良いなって思った男子に声をかけたけどにべなく断られたのだ。


「黙っていたって始まらないじゃない?
でも、声掛けるのだって勇気いるっつーの!
あー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
心、折れた」


マナちゃんの気持ちは、分かる。うん。とっても。痛いほど。
目の前の、ケーキセットはもうからっぽの皿だけ。マナちゃんが食べなかったミントの葉っぱだけが残っていた。
私は、自分のお皿のガトーショコラの最後の一欠片をつっついて、何となくすぐに口に運べずにいた。
全部のお皿が空いてしまったら、店員さんがやって来て、私達の前のお皿を持って行ってしまうだろう。なんとなく、今はそのタイミングじゃない気がしたし、来て欲しくなかった。

店員さんが来たら、きっとマナちゃんは『心折れた、折れた』と言っているダラダラんってなってる顔を止めて、


『あ、すみません』

なんて、普通の対応をするんだろうから。


心折れたって、人間としてコミュニケートするならば、そういう時はそうなるわけだろうから。


「マナちゃんは、がんばったよ。えらいよ」

「ありがとー…」

「本当だよ。きっと、いつか良い人に出会えるよ!」

私は、お世辞でもなんでもなく、そう言った。
だって、本当にマナちゃんに素敵な出会いをして欲しいって思ったから。


マナちゃんは、かくんっと音がしそうな勢いで頭を左にまげると、


「ほんっと!ありがとー」


と言った。頭を下げてるのか、ただがっくりとうな垂れたのか、ちょっと境界が曖昧。


「マナちゃんには、素敵な人が出来るよ」

「そうかなぁ?…あー、素敵な人かぁ。素敵な人ねぇ…」

「うん」

「でも、それって何時かな……。あんまり遠いと、あんま意味ないんだけど…」


うーん。
それは、私にも分からない。
それこそ、全身をめぐるDNAに定義付けられてたら楽なのに。
ただ、前進することだけを義務付けてるなんて。本当、DNAはずるいなぁ。


「大丈夫だよ。絶対、出会いはあるよ!」


「そうだね。そう思わないと、やってらんないよね!
言わなきゃ良かったなんて言ってても、始まんないしね!
まぁ、声かけたって、何にも始まんないけどね!」


「マナちゃんったら!がんばって!」


「やーん!もー!だって、私、頑張ってるもーん!
もーーー!
分かったよ!分かりましたよ!
頑張りますよ!頑張りますぅーーー…!」


マナちゃんは、半ばやけくそ気味に何度も頷いた。
本当に、マナちゃん、頑張ってって思う。
こんなことで、へこんだり負けたりして欲しくないって。


でも、なんでなんだろう。


『もう、頑張んなくても良いよ』


と、言うことも出来るのに。
なんで、やっぱり前に進む方向の方が正しい気がするんだろう。
諦めてなんか欲しくないって、思ってしまうんだろう。
やっぱり、DNAからの命令なのだろうけれど。


マナちゃんに、このままで居て欲しくはないって思う気持ちは。
本当。

諦めてしまったら、いけないよって。
思う気持ちが、本当なの。


マナちゃんは、じっと私の顔を見て、甘えるような苦笑をこぼした後、残っていたコーヒーを飲み干した。
私も、フォークで刺したまま放置していた一欠片を口に運んで、アイスティーで流し込む。


「もう、行こっか」
「そうだね」


伝票とお財布をもって、二人でレジに向かった。


「ここは、おごるからね!」

「えっ、良いよ!愚痴聞いてもらったの私だし!」

「いいの!ね?」

「ありがとう」


マナちゃんは、ぺこりって頭をさげて、にこって笑った。
私も、にこって笑って、お会計を済ませた。


やっぱり人間は、一つ所にとどまってはいられないから。
こうしてカフェも出て行かなければならないんだわ。
この世界で、いつでも前進するしかないなんて。


もう、秋の町は夕方なんてすぐに隠してしまうから、真っ暗な五時半。
マフラー代わりの、ストールが風にあおられる中。
私も、マナちゃんも、寒いって言いながら歩いた。


「もうすぐ、駅前イルミネーション始まるね」
「あ、そうか。クリスマスも近いんだね」
「クリスマスかーーー…はぁ」
「マナちゃん!がんばれ!]
「あー…、はいはい」


結局。カフェ内と同じ会話に戻って、私とマナちゃんは一緒になって苦笑した。



    おわり
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by yoseatumejin | 2010-10-31 03:45 | 短文/(計19こ)

綺麗な。

b0064495_2234101.jpgあんまりにも、更新しないですねー。苦笑。こんばんは、じり子です☆
なんだか、オンラインでの自分があんまりにも頑張ってないので、ちょっとダメだなぁと。
綺麗なものを、ちゃんと見たりしてないからかもしれない。そうかもしれない。
日常ばかりなのかもしれない!そんな感じかな
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by yoseatumejin | 2010-10-20 22:30 | よせ日常。

今日は寒いなー。

b0064495_23325662.jpg

今日は、本当に秋めいて寒いですなー。
先月に感じた秋は、やや偽者??苦笑。とりあえず、カゼなどに皆さん気をつけてv
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by yoseatumejin | 2010-10-04 23:34 | よせ日常。